便座上日記

トイレの中で考えてたことを書きます

『Braid』『いちげき』

ゲーム『Braid』をクリアした。

YoutubeShortでの紹介動画を見て以来ずっと気になっていた。ようやく購入。

パズルゲームに不慣れなため、極めて高難易度に感じられた。

一部のステージは攻略サイトを頼った。頼った上で納得のいかないステージもいくつか。

インディーズのパズルアクションならば仕方のないことか。

肝心のストーリー面については、表面についてはまあ、面白いかなといった感じ。

時間遡行のシステムとそれに関わる演出は全体的に面白く、表面ストーリーのオチにも一貫していて、好感触。

裏面についてはそもそも攻略に挫折...

結局動画で見てしまった

(それならそもそも買わなくても良かったのでは?)

 

松本次郎『いちげき』を読んだ。

幕末期江戸、薩摩藩士による「御用盗」に対して、力自慢の農民を集めて結成された「一撃必殺隊」を描く漫画作品だ。

見どころはなんといってもキャラクターのアクション描写だろう。荒い線によるボカシの独特な質感がキャラの動きに躍動感を与えている。

一方でストーリー面については、物語の結部にあたる7巻で突然意味不明でまどろっこしい展開になる。

映画『ちいかわ』の感想・メモ

内容を知っているので中々重い腰の上がらなかった『ちいかわ 島編』ですが、友人からの「セイレーンがエロい」という助言で、ようやく見に行きました。結論から言うとセイレーンは中々「良」かったです。

 

・武田氏のちいかわ論

これは俺自身の感想ではないが、映画を見に行く直前にTwitterで目に入った投稿の内容が目から鱗だったので記載する。

投稿者は武田崇玄氏。八幡書店代表で、私もここの本を何冊か持っている。

彼がいうには『ちいかわ』は「情動が物語を動かし、物語の方から思想が形成される」構造を持っているという。

「素朴な情動とキャラクターの動きを積み重ねていったら、いつの間にか資本主義論や共同体倫理や告発正義の限界にまで到達してしまう」

このような作品にいわゆる「児童教育」的意義がないことは明白であろう。この点から映画公開直後に一瞬あった「ちいかわは教育に悪いのではないか」という論争の、根底にある物語論的部分が剥き出しにされる。

そしてこの部分こそが、キャラクターの自律的アクションの起源であり、それが本作の面白さであることもまた、明白であろう。

 

・『机さする』は名曲

本作のエンディングである『机さする』の詩性に私は、人生でもトップクラスの衝撃を受けた。

そもそもこの映画に興味を持ったのは本楽曲からだった。

Youtubeを適当に流し見していたら、ちいかわがサムネイルのタイトルが『机さする』という異常な動画が流れて来たのだ。

その楽曲の完成度に唖然とした。

どうしても言外の意味を探ってしまう多層的な歌詞が、陽光のおおらかさを思わせるパーカッションと弦楽器が結びつき、唯一無二の魅力を醸し出している。

 

 

梨『霊媒クラブ』感想&メモ

梨『霊媒クラブ』を読んだ。

一言で言えば「オカルト趣味者の『都市伝説解体センター』」だった

これは紛れもなく、褒めだ

 

『都市解』の乗り越え

以前書いたような気もするが、私は『都市解』にモヤモヤとした不満足感を抱いていた

『都市解』の、オカルティックな事象を次々とクライム・サスペンスな真相に「解体」する物質主義的世界観は、(悪い意味で)現代的・大衆的だと私は考えている。

『都市解』で対立構造にある「センター」らと「SNS上の扇情的な陰謀論者」らは、「持っている複数の情報を繋ぎ合わせて論理を組み立て真実を暴く」という推理の構造のみを取り出せば、全く同一である

しかし状況証拠の組み合わせにすぎない「センター」の推理は、自白や主人公の内的確信によって「真実」であることが明らかになり、付随的にSNSの誤謬も明らかになる。

物語序盤に世界に溢れていたオカルトは全て物質主義的に「解体」され尽くす。

せっかく都市伝説を題材としているのに、その体験性・世界観を利用せず、内奥に潜む犯罪を暴くために引き裂かれるヴェールとしてのみ取り扱っているのだ。

そのヴェールの「ひだ」にこそ、オカルトないし都市伝説の醍醐味があるにも関わらず...

 

『霊媒クラブ』の特性

この『都市解』が切り捨てた「語り」の一種の暴力性に、物質的世界観の優位性としかしその内奥に潜んでいるかもしれない超自然的事象に目配せしているという点で、『霊媒クラブ』は「オカルトを対象としたフィクション作品」として評価するに相応しいだろう。

本作は「オカルト現象を捏造し、それを自作自演で(物質主義的方法で)解決し、好成績を得ようとする一般学生ら」と「彼らのマッチポンプを防ぐため、より早く(物質主義的方法で)解決する生徒会執行部」という対立構造を持つ、奇妙な中学校を舞台とした学園ミステリー作品である。

あれ?この作品もめちゃくちゃ物質主義じゃんと思うかもしれないが、初めから終わりまで

「『解決』は『怪異の正体を突き止める』ことじゃなくて『怪異が人為的に再現可能であると示す』って意味」(p.54)

「僕たちがしているのは、怪異の解決です。怪異の正体の解明ではありません」(p.382)

と自らの行為の欺瞞性、というと言葉が強すぎるが「それがある一つの語りにすぎない」ということ、に自覚的である。

これは洒落怖・SCP出身の作家で、ホラー系の作品をメインに執筆している「梨」の作家性ゆえのものであろう。

 

不満点

しかし不満もある。「キャラクター性の掘り下げが不十分」である点である

本作はいわゆる「キャラもの」であると作者が公言しているし、実際各章ごとに主人公のパートナー枠が異なり、毎回掘り下げが行われる。

キャラごとに「霊媒」行為の受け取り方・取り組み方が違うという仕方で、キャラクター性を出している点に、努力が認められる。

しかし「なぜ双柳は生徒会長に立候補したのか」「常森が怪異に興味を持つようになったきっかけは何か」など、各キャラクターに人間的に親しみを持てる設定はあまり登場せず、記号的なキャラクター性ばかりが前面に押し出されている。

またメインで登場する章は大抵各キャラ1章程度で、他の章では端役程度である。せっかくキャラが好きになっても「でももうあんまり出てこないんだろうな〜」と思ってしまう。

仕方のないことである。なぜなら本作はキャラものであると同時に、ミステリー物でもあるのだから、事件描写・状況整理・推理にページ数を割かねばならないのは当然だ。

なのでどうにか頑張って日常描写を入れ込み、その体験をキーとして推理を組み立てる展開は、この両者を両立させるために必要不可欠なのだ。

各キャラの掘り下げは、続編があれば期待すべきところだろう。

続編のテーマは「ある生徒会役員の家系と当地区の怪異との、奇妙な結びつき」か?

 

 

 

 

 

当ブログの今後の運用方法について

チョー気持ちいい!(挨拶)

 

二十年ほどの所感では、記憶は点滅する光だ

なので必要な時に現れてくれるとは限らない

外部に記録する必要がある

 

別にスマホのメモとかでもいいんだけど、どうせなら開かれた場所に書きたい

なのでこのブログを、もう少し用途を明確化して運用したいと思う

 

①流行の映画・小説・漫画、あるいは他のコンテンツに(自身の興味に関わらず)触れた感想

②最新の映画・小説・漫画、あるいは他のコンテンツのうち、自身の興味を引いたものに触れた感想

 

これを最低「月1本」ここにアップロードする。

 

 

積んでたゲーム『9時間9人9の扉』をクリア

いつだったかのSTEAMセールで購入したまま塩漬けされてた『9時間9人9の扉』をクリア

正直「俺の三が日、これに使いたくなかった....」という感想

「『Ever17』の刷り直し」って印象が強い!

同じトリックを使ってるわけなんだけど、「トリックのわかりやすさ」と「トリックの気持ちよさ」どっちを優先するかで後者を優先した結果が『999』って感じ。より感覚的っていうか。

評価低下の最大の原因はそれ以上に「脱出ゲーム」

陳腐なネタ、その中には謎解きとすら呼べないおつかいのようなネタもあった。

それを繰り返しやるのは正直しんどい!

 

『H9:origin』の感想

”気味の悪さ”を間違いなく体験できる怪作である(しかし一定の努力がプレイヤーに強いられる)。

私は本作をタイトル発表から追っていた。

本作をプレイし終えた今、「H9」に関わるリアルイベント・インタビュー・web記事の全てに薄気味悪さを覚える。また今後現れるこのゲームに関わる記事を見る目も、これまで向けていたそれとは異質なものとなるだろう。

 

 

 

 

 

つまるところ、本作はホラゲーではなく「プレイアブルなビデオゲームの形態をとったモキュメンタリーホラー」だった。

モキュメンタリーホラーとして見た時(また事前に発表されていたARGパートもプレイしたうえで)、この作品はそこそこに楽しめた。闇に葬られた事件の発端からその末に訪れる薄気味悪い”出来事”までを実際に手を動かしながら追う体験を、1000円未満で数時間に渡って行えるのだから、モキュメンタリーホラー愛好者としての視点からは酷評し難い。

 

しかしゲーム性については(モキュメンタリー性を加味しても)いくつかの問題があるように思われた。

まずゲームパートのみならずノベルパートすらもチープさが目立つ(バックログからtipsを回収できない・そもそもtips回収の導線が無いなど)。これらの点を「作品の性質的なものだ」と言い張るのは難しいように思われる。

またstage3のギミックはマウスの使用を前提していたが、私のプレイ環境ではマウスを使用していなかったため(マウスを使用する必然性が無かった)、50分ほど試行錯誤したのちに、諦めてTwitterを開いたところ偶然目に止まったネタバレを含む呟きを見て、なんとかクリアした。

これらは「クソゲーのデバッグ」という果てしなく退屈な作業をテーマにしている弊害のように思われる。しかしプレイヤーは本当にデバッグをしたいのではなく「デバッグを通して」ホラーを体験したいのだ。

最近観た映画・漫画の感想『落下の王国』『メメント』『箱の男』『事務的光空記録』

1.『落下の王国』

恋人と夢を失い絶望の淵にいるスタントマンの青年が致死量のモルヒネを手に入れるために少女に即興で物語を語るという、どう転んでも暗い未来を感じさせるストーリーを持つ本作の、両者の内面的世界観が絡み合いながら構築されるその物語世界は、信じられないほどに幻想的で荘厳で鳥肌が立つ。

また「落下」と「スタントマン」という2つのモチーフの組み合わせ方には驚いた。本作の全体を通して「落下」は絶望への転落を象徴するのだが、最終的にスタントマンに復帰した青年は「落下」を戯画的・英雄的に描き出しポジティブな象徴に変換する。この変換を成長した少女に語らせるエンディングは、まさしく「落下」からの「上昇」を想起させる。画面的にも物語的にもとても美しい物語だった。

 

2.

実は初めて見た。とても面白かったが頭が疲れた。

アリストテレス『詩学』的な解釈に開かれた作品であるように感じられた(物語の時間の流れを未来⇨過去にすることで「逆転」「再認」「受難」を頻発させ憐れみを引き起こす、という点で)。悲劇的とも喜劇的とも言える奇妙な感覚を覚えた。

 

3.『箱の男』

「私のパパは、箱の中に住んでいる...」という強烈な見出しから始まる本作は、子育て情報を掲載するkodomoe(コドモエ)というwebサイトの中での異質な雰囲気を醸し出している。エッセイ風の画と登場人物のリアルな心情描写は「世界のどこかでこんな出来事があったのではないか」という不安感を与える。

「箱」というどこかツルツルとした異質な物質とその「主」らを中心に据えて描き出される奇妙な生活世界と親子の悲哀が、なんでか心に残っている。

安倍公房『箱男』はあんまり関係ない。

 

4.『事務的光空記録』  

『アイドルマスター』シリーズの一作品『シャイニーカラーズ』のスピンオフとして連載されている本作は、その実『シャイニーカラーズ』4周年以降に事務所全体を巻き込み動き出したグランドストーリー(『明るい部屋』および『にちか編』に端を発するそれ)の、初見でも楽しめるよう再構成されたもう一つの『シャイニーカラーズ』だった!!!

本編ではどこか記号的だったなんでもできる超人事務員・七草はづきさんのパーソナリティだが、本作では彼女の視点で描き出すことで、彼女の「支える」精神性(=本作の定義する「アイドル」)を浮かび上がらせることに成功している。

また本編では4周年までのストーリー文脈とゲームの性質上避けられない断片化によって楽しむために「慣れ」が必要だった、アイドルに恋い焦がれる少女・七草にちかの物語は、漫画的な再編・補足的なストーリー展開の追加によって気軽に読めるようになった。